神戸産の茅を訪ねて〜「みんなの茅場」茅刈、火入れ見学レポート〜

<みんなの茅場を訪れて>

春の訪れを肌で感じるには少し早い2月。神戸の市街地から車で北に走ること約30分の場所、北区道場町にある「みんなの茅場」では立派に成長した藁色の茅が茂っています。「みんなの茅場」は隣接する谷さんの休耕田を転用したもので、茅場になる前は栗畑だったそうです。谷さんのご好意と協力により、NPO法人神戸かやぶきネットワークが主体となって茅の育成を始めました。茅場となって5年、毎年春先に行われている茅刈、火入れの様子をレポートします。

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茅の束を持つNPO法人神戸かやぶきネットワークの大前さん

<1年の集大成、茅の刈り入れ>

2月8日「みんなの茅場」を訪ねると、約1500平米ある茅場のススキは既に大半が刈り取られた後でした。路肩には刈り取られたばかりの茅が束ねられ立てかけられています。この広さの茅場だと、だいたい4〜5人で4日程度あれば刈入れができるそう。
少し太めの草木に対応した刃をつけた草刈機で刈った茅を集め、ひとかかえになったところで高さを揃えるためにトントンと地面で整えた後、専用の器具で束ねてビニール紐で結んでいきます。きれいに束ねるには少しコツが必要です。

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草刈機を使った茅刈りと、茅を集めるメンバー

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茅を束ねて運ぶ大前さん

大人の背丈ほどもある茅は150cm以上、周囲60cm以上に束ねられ、茅葺屋根の資材として納品されます。
「みんなの茅場」を始めた頃は茅の育ちが悪かったようですが、茅を育てる中で土壌がよくなり、昨年は約150束、今年は200束近くの茅がとれたそうです。

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積み込みを待つ茅束

<締めくくりの「茅場の火入れ」>

2月19日が天候の悪化で延期になり23日の祝日の午前に火入れが行われました。
火入れを行うことによって、土壌が灰の栄養分を取り込んだり、地表の落葉・落枝が取り除かれ、地表の光環境・温度環境を促進し、茅の育成を促進させるなどの効果があるそうです。

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この日、北区は早朝からマイナス5度と冷え込み、消火や延焼をふせぐために準備していたホースの残水が凍ってしまい、関係者は集合早々にストーブに火を入れ解凍するなど対応に追われていました。こういった予期せぬ事態が起こるのも自然の営みにはつきものです。

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ストーブの熱でホースを温める

茅場を3つの区画に分け、風下の方から火入れを行い火が大きくなることを防ぎます。また要所要所にバケツとホウキを手にしたメンバーが延焼をふせぐために配置されています。そういったノウハウも回を重ねる度に新たに蓄積されていくようです。

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区画と段取りが記されたボード

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火入れの様子

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火のくすぶりを水に浸したホウキで軽く叩く

準備すること1時間、火が放たれるとよく乾いた茅は一気に炎をあげながらほどよい風が南西から吹く風にあおられ茅場を走ります。点火と消火を繰り返しつつ順番に予定の区画に火入れを行い、約3時間で終了です。周囲は火入れ後のなんともノスタルジックな匂いにつつまれていました。

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火入れの様子を上空から

<次なる茅を目指して>

火入れが終わると、甘酒と茶菓子がふるまわれ、関係者でしばし歓談の時間です。
茅場は春先に雑草を除去する程度でほとんど手がかからないのが特徴で、昔は農家の方々が農閑期に刈入れし、それぞれ自分の家の屋根の資材として使っていたそうです。今注目されている持続可能な生活がこういったところでも営まれていたことに気づきました。

主体となっているNPO法人神戸かやぶきネットワークは神戸市内外に複数このような茅場を管理していて、茅の育成に力を入れているそうです。今後の茅の有用性や茅場の発展を話しつつ、今日の火入れが無事に終わったことに安堵の笑みがこぼれていました。

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