茅葺屋根の歌舞伎舞台で舞われる神戸農村歌舞伎2021見学レポート

2021年度の北区農村歌舞伎上演会が山田町上谷上の「上谷上農村歌舞伎舞台」で開かれました。昨年度はコロナ禍のため、あいな里山公園で無観客・映像配信の形での開催でしたが、今回は席は70に限定し、おひねりや声援は控えるよう呼びかけた上で2年ぶりに観客の前での上演です。演じる側も見る側もワクワクと期待感が高まった舞台をリポートします。

神戸市の北西部には古くから「農村歌舞伎舞台」が点在し、戦前まで活発に上演され、農民による地芝居も演じられていました。神戸市はそのような地域に残された有形、無形の文化を次世代に継承するため、体験教室や上演会を主催するなどの支援を実施してきたそうで、最近ではいずれも立派な茅葺き屋根を持つ「上谷上」「下谷上」「小河(おうご)」の3地区の舞台で実行委員会によって開催されてます。

上谷上天満神社にある歌舞伎舞台は、江戸時代の文久3(1863)年の建築とされ、県指定文化財です。茅葺き入母屋造りの平屋で地元の保存会が15~20年に一度屋根を葺き替えるなどのメンテナンスを行い守り続けてきました。正面は11.07メートル、側面7.4メートル。床几4台をつないで「廻り舞台」にしているのが特徴で、上演中に4人がかりで押して回すそうです。

この日の演目は、体験教室の修了生を中心に結成された「神戸すずらん歌舞伎」による「修禅寺物語」と、北区の甲緑小学校の子ども歌舞伎にルーツを持つ「六甲丹生(にぶ)歌舞伎」にその親子教室の子どもたちが加わった「寿曾我対面(ことぶきそがのたいめん)」です。コロナ禍の影響を受けて、積極的なPRはしなかったものの、地元の方々や口コミで開催を知った人たちで会場は埋まりました。

「修禅寺物語」は面造りの夜叉王、娘の桂、鎌倉将軍・頼家などが登場する一夜の物語です。入念な化粧をほどこし、鮮やかな衣装をまとった役者さんたちが、静かに語ったり、激しく立ち回りったり。桂の死の場面など見せ場では観客から大きな拍手が送られていました。途中、二度、廻り舞台を保存会の役員の方々が押し回し、夜叉王宅から川のほとり、また夜叉王宅へと移り変わる場面転換も見ている人を楽しませました。

「寿曾我対面」は曽我兄弟の敵討ちに題材を取ったお話です。大人に交じり、小学生など合わせて6人の児童がりりしい姿を披露し、朗々とせりふを述べました。実は出演者全員がそろうのは当日が初めてとのことでしたが、ピッタリ息の合った子どもたちの演技に、観客は感心して見入っていました。
舞台を見守っていた地元の男性は「堪能しました。自分の子にもやらせたい」。すずらん歌舞伎に知り合いがいるという長田区と西区から参加していた女性は「声がよく出て上手になっていました。来年も無事開ければいいですね」と話してくれました。

舞台を終えた小学2年生の出演者、高田啓成君は「カツラが重かった」と言いながらほっとした様子。曾我十郎役の6年生、松尾玲果さんは「みんなで成功できてよかった。歌舞伎はせりふのリズムの良さや昔の人の気持ちになれるところが好き」と満足そうでした。

今回の上演会の実行委員長を務めた神戸すずらん歌舞伎の竹内隆代表は「お客さんが入り、緊張感があっていい舞台ができた。おひねりや声援で一体となれるのが農村歌舞伎の醍醐味。早く味わえるようになれば」と今後の開催に向けての期待を交えてお話いただきました。また、上谷上農村歌舞伎舞台保存会の中西宏代表は「使ってこその舞台で、開催はうれしかった。維持は地元だけでは負担が大きいが、市と協力してクラウドファンディングの活用なども考え、後世に伝えていきたい」と歌舞伎舞台と文化の保存の大切さもお話いただきました。

公演の模様は「kobecitychannel-You Tube」で配信されています。

神戸の隠れたカルチャー、農村歌舞伎2021
前編<https://youtu.be/KYvR_gPGvT0>
後編<https://youtu.be/sUF2UUYA1TU>

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